年々増加する台北の路面店賃料 | 台北の直近10年の坪単価推移

台北市地政局が公表した實價登錄によると、2023 年(民國 112 年)の店面賃貸取引件数は 741 件となり、前年から 44.16%増加した。コロナ禍で沈静化していた飲食店向け空き物件の供給が動き出し、物件探しの選択肢が広がりつつある。一方、平均月賃料は 1 坪あたり 2,790 元で、前年比 12.14%の上昇に転じた。これは観光客の戻りと内需の持ち直しが重なり、好立地を中心に賃料が押し上げられた結果だ。ただし 2015 年(104 年)のピークである 3,172 元を依然 12%下回っており、歴史的な高値には戻り切っていない。コロナ禍の底だった 2020 年(109 年)の 2,353 元と比べると 18.6%の反発で、上昇ピッチの早さが際立つ。

*上の表は民國102年(2013年)〜民國 112 年(2023年)までの台北における1坪あたりの平均賃料の推移

 飲食店の出店余地を考えるうえで重要なのは、賃料が回復局面にありながらもピーク未満にとどまる「割安帯」にある点だ。信義計画区や西門町、忠孝東路など観光動線に直結するエリアでは、国際線の完全復便とインバウンド需要の復活を見込んで、募集が出ては即成約するケースが相次ぐ。募集情報の鮮度を逃さず、内見と事業計画確認を並行して進めるスピード感が欠かせない。こうした一等地では、家主側が定期借家契約を採用し、1~2年ごとに賃料をステップアップさせる条項を求める例が増えている。長く腰を据えてブランドづくりを狙う場合、契約交渉では賃料固定期間を少なくとも3年は確保する、もしくは固定費上昇分を内装投資額に反映させるなど、総投資額の回収計算をあらかじめシミュレーションしておくべきだ。

 また、台北市中心部の空き区画には、パンデミック期に退店した小規模テナントの跡地を改装せずにそのまま再募集する「原状渡し」案件が少なくない。厨房設備の再利用が可能かどうかを現地で確認すれば、内装コストを数十万元単位で圧縮できる可能性がある。逆に、グレードの高い複合施設では設備規格が厳格で、排気・排水ラインの追加工事が必須となり、工期・コストともに膨らみやすい。初期投資とブランドイメージのバランスを見極め、ロードサイド型かモールイン型かを早い段階で絞り込むとよい。

 飲食店が立地を選ぶ際は、ターゲット客層に応じて昼夜人口と歩行導線を細かく調査したい。例えばオフィス集積が多い松江南京エリアはランチ特需で賃料が上昇しやすく、夜間は人通りが減る傾向がある。一方、西門町は若年層と旅行者が終日流動し、客単価は抑えめでも回転率で売上を伸ばせる。コスト増を許容しても高単価メニューで勝負するなら信義計画区が依然有力だが、周辺一帯で高級ホテルの新規開業が続いているため、今後さらに賃料が上向く点には注意が必要だ。

 総じて、台北の店面市場はコロナ前の水準に向けて力強いリバウンド局面にある。賃料が過去ピークに到達する前の「最後の買い場」と見る向きもあり、良質な物件を押さえるには情報収集網とタイムリーな現地視察が欠かせない。出店を検討するレストランにとっては、①ピーク未満の現在の賃料水準、②契約形態の多様化によるリスク分散、③設備再利用余地の見極め、を三つの判断軸に据え、早期に意思決定できる体制を整えておくことが成功の鍵となるだろう。

 

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